「DeNA、経済的利益にのみ着目」 第三者委 サイト問題で

2017年03月13日

「DeNA、経済的利益にのみ着目」 第三者委 サイト問題で調査報告書

「DeNA、経済的利益にのみ着目」 第三者委   サイト問題で調査報告書

ディー・エヌ・エー(DeNA)は13日、キュレーション(まとめ)サイトに関する第三者委員会の調査報告書を発表した。著作権侵害や倫理的な問題が数多く明らかになり、委員長の名取勝也弁護士は「事業拡大や経済的利益にのみ着目した」とDeNAのキュレーション事業の運営に問題があったと指摘した。南場智子会長は事業再開について「白紙」とした。

 法令違反が見込まれる事例が多く認められたことについて、第三者委は事業の進め方やリスクなどの認識が曖昧なままキュレーション事業に参入したことが原因とした。

 名取委員長は「様々な認識が足りなかった点をDeNAは反省すべきだ」とし、「DeNAが掲げてきた『永久ベンチャー』は免罪符にならない」と企業風土の見直しが必要との見方を示した。

 第三者委後には南場会長と守安功社長が会見、守安社長は今回の問題について(1)キュレーション事業が本質としてお客様に何を提供するかが定まっていなかったこと、(2)企業買収からPMI(買収後の統合作業)、その後の事業拡大へと推進する過程でルールを定めてチェックすることが足りなかったことを挙げた。その上で「もうけ主義との指摘を深く反省し、社会にどういった貢献をしていくのか、事業経営の中枢に据えていく」と従業員全員へのコンプライアンス徹底などを進める考えを示した。

 再び代表権を持つことを発表した南場会長は「守安と力を合わせて複眼的に確認しながら会社全体の変革に取り組む」と決意を示した。キュレーション事業については「お客様からの声をいただき、キュレーションサービスへのニーズは存在する」としながら、「再開へのめどはたっておらず白紙」とした。

 第三者委は2016年11月10日時点での37万6671件についてサンプル調査した。複製権と翻訳権を侵害している可能性のある記事は1.9~5.6%あるとした。侵害の可能性がないとはいえないものも0.5~3%あった。

 サイトに掲載されていた画像について472万4571件のうち、16%にあたる74万7643件あると認定。医療関連サイト「WELQ」について外部から問題の指摘を受けた19件のうち、薬機法や医療法、健康増進法に違反する可能性のある記事が10本あった。

 著作権侵害以外にも、WELQには医師の間でも見解が分かれる内容を安易に掲載、センシティブなテーマの記事にアフィリエイト広告を掲載するなどの倫理的な問題があったとした。その他のサイトでも著作物の取り扱いやプロバイダ責任制限法に基づいた対応についても問題があったと結論づけた。

 第三者委の報告を受けてDeNAは南場会長の代表権復帰とともに、守安功社長は16年12月時点で30%としていた月額報酬の削減額を50%に拡大することを決めた。

 またDeNAがキュレーション事業に参入するきっかけとなったiemoを立ち上げた村田マリ執行役員は、DeNAの執行役員とiemoの代表取締役を辞任する意向を表明した。同じくペロリの中川綾太郎代表取締役は12日に辞任した。

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DeNA情報サイト、医療記事10本で法令違反の可能性
 IT大手のディー・エヌ・エーは、運営する“情報まとめサイト”に根拠が不明確な記事を掲載していた問題で、医療関係の法令に違反した可能性のある記事が10本あったと明らかにしました。
 この問題はディー・エヌ・エーが運営する“情報まとめサイト”で、根拠が不明確な記事を掲載していたなどとしてサイトが休止に追い込まれたものです。
 この問題で第三者委員会が調査報告書を発表し、「まとめサイト」の中に医療関係の法令に違反している可能性のある記事が10本あったことを明らかにしました。さらに、掲載していた画像のうち最大でおよそ75万件、記事のうち最大でおよそ2万本が著作権法で定められた「複製権」を侵害した疑いがあると指摘しています。
 「多数の皆様にご迷惑ご心配をかけたこと、改めて深くおわび申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」(ディー・エヌ・エー 守安 功 社長)
 こうした問題の責任をとってディー・エヌ・エーは守安社長の月額報酬の下げ幅を30%から50%に拡大することを決めたほか、管理体制を強化するとして、創業者の南場会長を6年ぶりに代表取締役に復帰させることを決めました。

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サイト休止で収入はいきなり3分の1に…「盗用なぜ」揺れる現場 

今回の不正記事問題をめぐっては、インターネットメディアの世界で働く人の生活にも影を落としている。「なぜ盗用のチェックを徹底しなかったのか」。子育ての傍らDeNAが運営するサイトで記事を執筆していた女性は、記事の発注ストップで収入が激減。「他にも苦労しているライターは多いと思う」と話す。

 アパレル業界で働いた経験があり、約3年前からDeNAのサイトでファッションや化粧品を紹介する記事を書き始めた。北海道内陸部の自宅で子供2人を育てながら、毎日1本の長文記事を執筆し、月約30万円の収入があった。

 ネット上の画像を無断使用していた時期もあったが、許可を得たサイトのものを使うようルール変更があり注意するようになった。担当者からは「記事の盗用はしないように」とくぎを刺されていたという。

 だが昨年末の問題発覚で、DeNAのサイトは一斉休止に追い込まれた。運営側からは「業務を打ち切る」とライター向けの連絡があっただけ。それまでの仕事は大半がDeNA絡みだったため、いきなり収入が3分の1になった。

結局、13日に公表された第三者委員会の調査結果も知らされなかった。他社サイトの仕事で、執筆依頼がなくなったものもあり、業界全体への影響を肌で感じている。「新しい仕事を探すのは大変。DeNAは全てのサイトをきちんと管理してほしかった」

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名物社長には要注意!? 東芝、DeNA、オリンパス…粉飾決算、企業不祥事を見抜くための「6つの注意点」

 粉飾決算企業やそれに準じる怪しい企業は、有価証券報告書上の数字に注視することでも察知できるが、企業の適時開示情報の文言やリリースを出すタイミング、メディアの動向や経営者の振る舞いといった定性的な観点からも見抜くコツがある。

 粉飾決算を行う主体は、

①損失を隠したい・時価総額を釣り上げたい経営陣

②経営者の掲げる無茶な経営目標の達成にプレッシャーのかかった現場

③内部統制が行き届いていない子会社の経営者(主に海外)

の3パターンに大別される。②や③といった現場の内部事情は外からなかなか窺うことが難しいが、①の経営者の行動に関しては、メディアや会社のニュースリリースを通じてある程度把握することができる。以下に、「PR」や「人事」など6つの観点から、怪しいと疑うべき兆候についてまとめた。

粉飾ケッさん


1.PR/IR

 まず、会社や社長が無闇やたらにメディア露出したり、社長が社内・メディア・アナリストから神格化されている企業には要注意である。企業に対して独立的に接するべき経済メディアが、壮大な事業構想を語る社長を無批判に「イノベーター」などとして取り上げることがよくある。

 社長は「○年後に売上×兆円を達成する」とか「業界構造を一変させる」などと大仰なことを言いがちだが、その実現可能性について経済記者がきちんと検証した上で取り上げているケースは少ない。一般紙ならなおさらだ。特に「名物社長」のような人物に対しては、社員のみならず記者やメディアもある種の「信者」となってしまって、業績目標が未達に終わっても批判的な記事が載らないこともある。

 雑誌や新聞、ネットメディアに限らず、紙の書籍でも特定の会社や社長を持ち上げるものがよくあるが、これらも会社のある種の「販促資料」だと考えるべきだ。実際、自社で買い上げて広告宣伝費として計上していることもある。

 こうした会社・社長の露骨なメディア露出が危険なのは本業がうまくいっていないところこそ、こういったPRに腐心しているケースがあるからだ。読者としては時価総額釣り上げのためにメディアに出ているの可能性を考える必要があるとともに、メディアに出まくっている企業の実態はどうなっているのか、定量的に見る必要がある。

 適時開示など、IRにおいてはより一層露骨な株価釣り上げのためのアピールが行われることもある。これも要注意だ。特にいま流行りなのは「AI」「IoT」「VR/AR」「Fintech」「Blockchain」など、これからの成長が期待される技術分野と絡めたリリースを、本業となんら関係ないのに多発することだ。

 昨年、企業の過大評価や不正を追及する空売り屋であるウェル・インベストメンツ・リサーチから指摘を受けた「JIG-SAW(ジグソー)」というベンチャー企業は「AI」や「IoT」といった用語を頻繁に使っているが、実際にはそれらの技術を開発するエンジニアは全然いないのではないかと疑われている。

 とりわけ個人投資家の多いマザーズにおいては、IRの文言だけに飛びついて銘柄が売買され、企業価値評価の理論では正当化しえない株価になる現象がよく見られる。それを悪用して中身のないリリースばかり出している会社は厳しく見張る必要がある。

2.買収・海外進出

 M&Aや海外進出は上場企業が成長するために不可欠な手段であり、ますますその重要性は高まっているが、不正の温床にもなり得る。M&Aにおいては本業との「シナジー(相乗効果)」を出すことが求められるが、本業とは全く関係のない会社を頻繁に買収するケースがある。見かけ上の利益を増やすことが可能だからだ。

 しかし、高値での買収を続けると「のれん代」がかさみ、買った会社をうまく成長させられなければ、結局損失を被る。また、逆に安く会社を買い叩いて「負ののれん」という利益を上げるスキームも存在する。安く買収が行えるのはいいことだが、「負ののれん」に頼りすぎた利益構造になっていないか注意する必要がある。

 これまで見た例のように、実際に会社を買収しているならまだよいが、海外進出などを謳って子会社を作ってはいるものの実態がない場合や、親会社の損失を隠したり循環取引に使われている場合がある。海外にファンドを作っておくと資金を還流させてもバレにくいため、意図が不明なファンドを作った際にも要注意だ。オリンパスなど大企業の不正にもよく使われてきた。海外進出のリリースが何年も前に出ているが、その後ほとんど続報がない場合や有価証券報告書で触れられていない場合は怪しい企業と見てよい。

3.資金調達

 銀行からの借り入れも増資による市場からの資金調達も企業の成長には不可欠だが、本当に成長のために使われるのかには気をつけたい。転換社債の発行、とくにMSワラント債というスキームでの資金調達は、通常の銀行借り入れが難しい場合にとられることも多く、これを使う企業があれば、なぜ資金調達に苦戦しているのかを考える必要がある。

4.人事

 社内人事や株主の移動については、有価証券報告書に記載されるほか、会社のホームページで適時開示資料として掲載されたり、日経新聞に載る場合もある。気をつけたいのは、まず監査役が頻繁に交代しているケースだ。創業者を含む大株主がある時点で大量に株を売っていないかどうかもチェックしたい。

 これらが行われている場合、内部の人材が逃げ出したがっている可能性がある。社外取締役が少なかったり、明らかに社長と懇意にしている人材ばかりに見えるところも、適切なガバナンスが行われていない危険性があると見て注意すべきだ。役員給与が急激に上昇している場合も経営陣が会社を食物にしている可能性がある。これは急成長に見えるベンチャーに起きやすい。逆に、業績はよく見えるのに役員給与が急減している場合も、内部に何か深刻な問題を抱えている可能性があるから、いずれにしても注意したい。

5.会計/業績

 定量的な会計の分析から粉飾が見抜けることは前稿、あるいは拙著『東大式 スゴい[決算書の読み方]』でも解説しているが、定性的な文言からでも兆候を察知できる。

 有価証券報告書上で頻繁に「変更」という言葉が使われていないか確認しよう。特に「会計方針の変更」が何度も行われている場合はリスキーで、利益を大きく見せるための工夫が行われている可能性がある。帳簿が正しい限り現預金をごまかすことは難しいが、会計方針次第で利益はある程度、操作可能だ。

 業績を見る上では、「競合他社はどこも減益しているのに1社だけ増益」とか「ぎりぎりで赤字転落を免れている」といった不自然なことが起きていないかをチェックしよう。全うな営業努力によって数字をあげている素晴らしい会社であるというパターンももちろんあるが、例えば東芝のPC事業では会計不正によってまさにこういった不自然な業績の出方をしていた。

6.その他

 ここまでは、有価証券報告書の記載事項や、適時開示のリリース、そして経済メディアの取り上げ方から怪しい企業の兆候をつかもうと試みてきたが、他にも役立つ情報ソースはある。

 SNSでの噂は玉石混交なものの、その影響力はバカにならない。昨年、高齢者への高額請求問題が取りざたされたPCデポも、子会社のメディア事業が著作権侵害をした疑いが問題になったDeNAも、初期の段階でネット上で顧客や識者が指摘を行っていた。こうした声をうまく拾って怪しい会社に気づけると良いだろう。逆に、業界全体や該当企業がやたらとSNSなどで褒められていて「バブル感」が出ている場合も要注意だ。会社のPRにうまく踊らされている可能性もある。

 1~6と様々な観点から怪しい企業の見分け方を書いてきたが、それぞれの要素は繋がっている。

 本業が不振だからこそ、資金調達のために社長が無闇にメディアに出演したり、流行の用語を多用したIRを多発したり、無理なスキームで増資を頻発する。利益をかさ上げしたり損失を隠すため、本業と無関係のM&Aを頻発、目的不明のファンドを設立したり、実態のない海外展開・子会社の設立を行う。

 結果、粉飾のため会計方針の頻繁な変更が生じたり、粉飾の結果、ぎりぎり赤字にならない、競合他社より異様に利益率が高いなど不自然な状態が生じる。そして、内部統制が取れなくなり、監査役の頻繁な交代、既存大株主の売り抜け、役員給与の急激な増減が生じる。それらの兆候は公開情報やメディア以外に加え、ネットでの「炎上」などからも察知することができる。


怪しい会社は一時的に株価を釣り上げることはあっても、長期的には株主の価値を毀損し、日本市場全体の価値を下げる。うまく見抜ける目を持って、注視したいものだ。東芝などさまざまなニュースな企業の実例とともに、怪しい企業を見分け方を解説、“次の東芝”を探っていく拙著『東大式 スゴい[決算書の読み方]』もぜひ参考にしてほしい。


rikezyo00sumaho at 23:55|PermalinkComments(0)