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2019年12月02日

中国SNS 「便利だけど不便」シャレにならない監視社会に突入した中国の悪夢 /二大アプリ「Alipay」「WeChat Pay」のシェアは? 中国政府監視アプリ

中国SNS 「便利だけど不便」シャレにならない監視社会に突入した中国の悪夢 /二大アプリ「Alipay」「WeChat Pay」のシェアは? 中国政府監視アプリ




シャレにならない監視社会に突入した中国の悪夢


 今どきの中国人は「ウィーチャット(WeChat)」(中国名は「微信」)がないと生きてはいけない。中国では、今やありとあらゆるサービスをこのプラットフォームが提供する。名刺交換も、ウィーチャットのID交換にとって代わられるほどである。

 ウィーチャットとは中国IT企業大手のテンセントが提供するSNSアプリだ。アクティブユーザーは全世界で毎月10億人に上る(『2018ウィーチャット年度データ報告』)。

 ウィーチャットは、LINE(ライン)のようなチャット機能とFB(フェイスブック)のような情報発信機能を備えている。毎日450億の情報発信が行われるというチャット機能の拡散力はすさまじい。中国では、「反日ムードが友好ムードに一転したのも、このウィーチャットの力ではないか」と受け止める人もいる。

 ウィーチャットユーザーは自分のアカウントと銀行口座を紐づけることで、キャッシュレス決済も行える。テンセントが提供する「ウィーチャット支払(ウィーチャットペイ)」機能は、アリババの「支付宝(アリペイ)」とともに中国キャッシュレス決済の二大双璧を成している。


コンビニでの支払いもウィーチャットで


 もともとウィーチャットのサービスは1999年に「QQ」というチャット機能から始まった。当初はユーザーは匿名だったが、今では実名登録制となっている。住所、氏名、身分証の番号、会社名、仕事内容、銀行口座番号など、さまざまな個人情報を入力することで、初めて多種多様なサービスを享受することができる。



ウィーチャットをやらない老人は「切り捨て」
 上海では今、このウィーチャットアカウントを持っていないとパスポート申請もできない。上海在住の日本人女性・畠田瑞穂さん(仮名)は最近こんな光景を目撃した。

「その日、中国人の夫のパスポートを更新するために公安局の出入国管理事務所を訪れました。中に入ると、突然『老人は海外へ行くなというのか! 俺はスマホも持っていないし、ウィーチャットも知らないんだ!』という怒鳴り声を耳にしました。見ると、おじいさんが事務所の担当者と喧嘩していたんです。担当者は『家族か友人を呼んで出直して来い』と冷たく言い放って、相手にしない様子でした」

 畠田さんによると「そもそもパスポート更新を申請するとき、番号札を取るところから『ウィーチャット』がないとダメ」なのだという。現在、多くの企業や地方自治体が、ウィーチャットのアプリ上でサービスを提供している。上海市も、公安局がパスポート申請の際の予約や整理番号の配布に、ウィーチャットのアプリを利用しているのだ。畠田さんは「スマホを持たない人を誘導する係員がいるにはいるんですが、待っていても誰も来てくれません。態度も悪いので“IT弱者”はみんな困っていました」と言う。もはや中国は、ウィーチャットがないと、公的機関が交付する文書ですら手に入れられないという状況なのだ。

 筆者は、政府系企業に勤務し、ITソリューションに詳しい張帆さん(仮名)に、この状況をどう思うか意見を尋ねてみた。すると返ってきたのは、「高齢者を気にしていたら中国は発展しませんよ」というシビアなコメントだった。「人口の2割を切り捨てるのが中国のやり方です」と実にあっけらかんと言い放つ。スマホを使えない人のことなんて、かまっていられないというわけだ。

公安が即座にやって来て拘束された
 だが、強い抵抗感を抱いているのが在外の華人・華僑たちだ。

 日本での生活が20年になる林麗麗さん(仮名、女性)は、すでに持っているウィーチャットのアカウントを作り直そうとした。クラウドサービスなどウィーチャットの新しい機能を使えるようにするためだ。しかし、あまりにも「個人情報」入力の要求が多いので途中で断念した。「便利になるのはわかっていますが、やっぱり怖くなりました」と言う。

 林さんは、「ウィーチャットを使って本音を発信すると、とんでもないことが起こる」とも指摘する。中国に在住する親戚の男性が、ある騒動に巻き込まれたというのだ。

「彼の住んでいる住宅の隣接地でマンションの建設が進められています。その開発事業者についてウィーチャット上でちょっと文句を言ったら、すぐに、彼の自宅に公安が飛んできたんです。そして、彼に向って『余計なことを言うな』と凄んだそうです。ウィーチャット上の情報発信は公安から見張られているんです。その話を聞いて、思わず背筋が寒くなりました」

 上海出身で日本在住の男性、王威さん(仮名)もこう語る。

「私のような海外での生活が長い中国人は、中国企業が提供する配車サービスやキャッシュレスサービスを中国で利用することができません。これらのサービスは基本的に、中国在住者および中国に銀行口座がある人を対象にしているためです。最近は状況が変わって外国人でも利用できるようになったようですが、私は手続きを進めていません。これ以上深く中国とは関わりたくないからです」

検閲は国境を超える
 中国政府がネット上の情報発信を厳しく監視していることは周知の事実だ。

 アメリカに本部を置く人権擁護国際NGO団体「フリーダム・ハウス」によれば、「習近平」「共産党」「天安門事件」「人権」などが“特定キーワード”として監視されているという。2013年の時点では、200万人を超える監視従事者がいる(『新京報』)とされていたが、2017年にサイバーセキュリティを強化するための法律「インターネット安全法」が制定され、さらに監視が厳しくなった。

 近年は市民のたわいのないチャットでさえも監視されるようになった。山東省では、若い女性が「疫病が発生したようだから豚肉や鶏肉を食べないようにしなければ」という内容をウィーチャットに書き込んだだけで、6~7人の公安局員が自宅に踏み込んできた。友人同士の会話だったが、「デマを流した」という罪を着せられ、当局に連行された。一部始終がスマホで撮影されており(その女性が自分から仕掛けて隠し撮りさせた可能性もある)、その映像が香港メディアのサイトに掲載されている。筆者も見たのだが、さすがにゾッとした。

 拘束には至らないもののアカウントを凍結されるケースもある。「甥がウィーチャットのアカウントを凍結された」と話すのは、上海の大手商社(中国企業)に勤務する李小建さん(仮名)さんだ。「友人とのチャットで、彼はうっかり“特定のキーワード”を使ってしまったんです。案の定、即刻ウィーチャットのアカウントが使えなくなってしまいました。気の毒だったのはその先で、ウィーチャットペイにプールしているお金も動かせなくなってしまったのです」

 中国政府による監視は今や国境を越える。筆者は、中国以外の国でも使えるグローバル版のウィーチャットを使って、上海在住の日本人とメッセージをやり取りしているが、「中国の政治の話だけは送らないで下さいね」とクギをさされた。中国系アメリカ人がウィーチャットを使って「香港デモを支持する言論」を発信したところ、中国政府の検閲によってアカウントが停止されたケースもある。

中国は「地球上で最も不自由な国の1つ」
 中国では、友人と連絡をとるにも、支払いをするにも、デリバリーを頼むにも、何をするにもウィーチャットを使えば素早くできる。多くの市民はこれこそが「生活水準の向上」だと受け止めている。

 それに対して李さんは、「ウィーチャットがなければすべてが立ち行かなくなります。中国で生活するには、この状況を受け入れるしかないのです」という。

 フリーダム・ハウスは、中国は「地球上で最も不自由な国の1つだ」としている。その自由度は100点満点でわずか11点である(2019年、日本は96点)。しかし、中国の人々は「便利だ、便利だ」と言いながら、監視社会という大きな鳥かごの中に知らず知らずのうちに取り込まれている。人としての尊厳があるのかという思考の余地すら与えられないまま。


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中国版LINEが怪物アプリとなった非常識な戦略 微信(ウィーチャット)


中国発のメッセージアプリ・微信(ウィーチャット)は、ユーザー数とその滞在時間を増やし続けている。秘訣は何か。経営学者のハワード・ユー教授は「微信は自身を連結器に転換させ、人と企業をつないだ。製品の優れた機能は社内では決して開発できないと認識し、意思決定を分散させ、アウトプットを『大量生産』させた」という――。
※本稿は、ハワード・ユー著・東方雅美訳『LEAP ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。



■中国最大のメッセージアプリ企業
中国南部の広州市、ビジネス街の中心部から珠江を渡ったところに広州タワーが立っている。2005年に建設されたこの超高層ビルは、DNAの二重らせんのように、2列の楕円形の連なりが45度の角度で互いに絡まり合っているデザインだ。


ハワード・ユー著・東方雅美訳『LEAP ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則』(プレジデント社)
広州市でひときわ目立つこの特徴的な建物は、2013年に上海で新しいビルが建つまでのあいだ、中国で最も高いタワーだった。

その広州タワーの陰に、T.I.T創意園がある。古い工場を再開発した建物が集まっている地域だ。84番ビルの赤レンガの壁にかかっているプレートには、その建物が1950年代には繊維工場で、60年代と70年代には軍事施設となり、70年代半ばに民間に転用されたと書かれている。

現在の前のテナントは金属加工業者で、地元の自動車産業に部品を供給していた。このビルとその近くの3つの建物は、微信(ウィーチャット)の本社ビルだ。微信は中国最大のメッセージアプリを提供している企業である。

親会社のテンセント(騰訊控股)の株式時価総額は、2017年に3000億ドルを超え、アリババを追い抜いて中国およびアジアでトップとなった。いまやゼネラル・エレクトリック(2600億ドル)、IBM(1650億ドル)、インテル(1700億ドル)といったアメリカの優良企業と肩を並べる。

■フェイスブックを圧倒、ダントツに長い滞在時間
微信に関して最も驚かされるのは、中国のあらゆることがそうであるように、その急速な成長だ。微信は中国版のワッツアップに過ぎないと一蹴する人もいるし、中国人でなければ、そのサービスの名前を聞いたことがない人が多いかもしれない。

それでも、月間のアクティブユーザー数は9億3800万人で、アメリカはもとより、ヨーロッパの全人口をも上回る。

ワッツアップは世界に12億人以上のユーザーがいる。フェイスブックのユーザー数は20億人以上だ。しかし、微信のユーザーの3分の1は1日あたり4時間以上を微信に費やしており、ジュリエットはその点にこそ注目してほしいという。

これに対して、フェイスブックにユーザーが費やす時間は1日平均35分、スナップチャットでは25分、インスタグラムでは15分、ツイッターでは1分だ。

微信はどのようにしてそれほど多くのユーザーを獲得し、それほど長い時間アプリに引き付けていられるのだろうか。微信はエンドユーザーが創造力を発揮できるようにした。しかも、微信はそれをきわめて中国的な方法で行った。

すなわち、同社はユーザーの体験に力を入れただけでなく、サードパーティが新たな機能をつくれるように、新たなツールの開発にも力を注いだのだ。

■どの企業も欲しがる顧客データを蓄積しない
オンラインの世界にはいまだにデコボコした世界で、閉鎖的なコミュニティや閉じられた空間がある。たとえば、中国政府は長年、疑わしいと思われる海外のウェブサイトを追い払ってきた。

「グレート・ファイアウォール」として知られる、インターネットに関する取り締まりや、謎めいた検閲などが広く行われているため、中国ではグーグルやツイッター、ユーチューブ、フェイスブックをインターネット上で見つけることはできない。

中国では、多数のアプリが最初はどこか西側のアプリに似ているが、やがてまったく違うものに進化していく。

西側の企業はモバイル広告に慣れ親しんでいる。フェイスブックやグーグル、ツイッター、スナップチャットなどは、大量のユーザーのデータを集めて、強力なアルゴリズムをさらに磨き上げ、広告主がよりターゲットを絞って広告を打てるようにしている。

しかし中国では、ユーザーのデータを蓄積することには大きな政治的なリスクが伴う。したがって、インターネット企業は広告主経由ではなくユーザーに直接おカネを払ってもらうことを選んだ。

取引手数料を課すか、アプリ内で何かを購入してもらうのである。顧客がサービスに対して直接おカネを払ってくれるのであれば、データマイニングをする必要はない。

■お年玉やご祝儀、公共料金、投資もアプリで
世界の消費者は、たとえ同じようなテクノロジーを使っていたとしても、慣習はそれぞれに大きく異なる。したがって大手テクノロジー企業も、各地の環境に高度に適合した生物のようになっていく。

例として、スマートフォン決済を見てみよう。微信は2013年に、最初の決済システム「微信支付(ウィーチャットペイ)」を立ち上げた。そのなかでも絶大な人気を誇る機能が「紅包(ホンパオ)」だ。

これは、デジタルマネーの入ったバーチャルな封筒を、ユーザーが春節(旧正月)などに家族や友人に送れる機能だ。

微信はこの伝統的な習慣に少しひねりを加えた。送る総額と送る人数をユーザーが決めれば、あとはアプリが各人に送る金額をランダムに設定する。たとえば、3000人民元を30人の友人に送るとする。すると、なかには他の人たちよりも多くもらえる人が出てきて、あちこちでニヤリとした顔やがっかりした顔が見られる。

これはある意味で社交であり、ゲームであり、ちょっとしたギャンブルでもある。2016年2月7日から12日までのあいだには、320億通の紅包が送られた。その前年の同期間は32億通だったので、大幅な拡大である。

微信では公共料金の支払いやファンドへの投資も行える。さらに、親会社のテンセントは、中国版ウーバーとも言える滴滴出行(ディディチューシン)と、中国版グルーポンとも言える美団点評(メイトゥアンディエンピン)に何十億ドルもの投資を行い、微信のユーザーがアプリから離れることなく車を呼んだり、グループ割引を受けたりできるようにした。

■生活に不可欠なモバイルツールに
微信のサービスは近年さらに拡大し、いまでは地域の小売店だけでなく、マクドナルドやKFC、セブン‐イレブン、スターバックス、ユニクロといった錚々たる大手小売業も、微信支付による支払いを受け付けるようになった。

ニューヨーク・タイムズ紙は中国におけるこの社会・経済的現象について、「現金は急速に過去のものになりつつある」と書いた。

今日では、スマートフォンを振って新しい友人を見つける機能が人気になっている。また、テレビの前でスマートフォンを振るとそのスマートフォンが放送中の番組を認識し、視聴者がそれに参加できる。

微信は実質的に、フェイスブックとインスタグラム、ツイッター、ジンガ(ソーシャルゲーム)を1つにまとめたものとなった。単なるメッセージアプリとして存在するのではなく、なくてはならないモバイルツールとなったのだ。診察の予約、病院の支払い、警察調書の記入、レストランの予約、銀行サービスの利用、テレビ会議の開催、ゲームなど、多くのことに欠かせない。

この怪物級のアプリの成長は、自力だけでは実現できない。微信はグーグルやフェイスブック以上に自社のユーザーにクリエイティブになることを求める。微信のプラットフォーム上の新たなサービスを彼らに開発してもらう必要があるからだ。

■オフィシャル・アカウントで企業と客を結ぶ
2012年に、微信の17人の社員が、企業をターゲットとした「オフィシャル・アカウント」という新たなコンセプトの実験を行った。その時点で、微信はすでに消費者からは強い支持を得ていた。

しかし、チームはオープンなアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)を使って、微信を外部企業の製品やサービスのための、コミュニケーションの経路にしたいと考えていた。

単純化して言えば、APIとは2つのソフトウェア間での情報交換を可能にするための規則やガイドラインだ。ソフトウェアのプログラムやプロトコル、ツールによって、サードパーティは微信の巨大なユーザーベースを活用することができる。

微信のオープン・プラットフォーム部門のバイス・ゼネラルマネジャーであるレイク・ヅァンは次のように説明した。

「これまで、微信は人々をつなげるのに成功してきた。しかし、企業が微信を使ってどのように顧客とコミュニケーションをとれるかについては、よく見えていなかった。この目標を達成するための手段として、『オフィシャル・アカウント』がうってつけだと考えた」。

■「オープンな接続」が企業を引き付ける
最初のうちは誰もどんなサービスを提供するべきか自信がなかった。エンジニアたちが有望なアイデアを探していると、招商銀行がそこに加わった。

ヅァンによると、招商銀行とのプロジェクトの目標はシンプルだった。それは、顧客が望むことなら何でもするということだ。

「当時、オフィシャル・アカウントについてのアイデアは非常に初期的なもので、デモも数えるほどしかなかった。わたしたちが考えていたのは、企業は顧客にメッセージやクーポンを送り、宣伝をするだろうということだった。初期のアイデアはすべて『同報通信』の機能を中心に考えられていた。しかし、招商銀行が加わったことで、わたしたちの考え方は変わった」
「銀行はデータセキュリティに厳しい基準を設けており、データを自社のサーバーに保存しておかなければならない。その状況では、わたしたちはオープンな接続を提供する必要があった。そのときから、わたしたちは微信を『連結器』や『パイプ』の役割に転換させた。企業が微信上で、自社のサーバーから情報を消費者に送れるようにしたのだ」

■ユーザーの手間を劇的に減らす効果も
このオープンな接続が、企業を引きつけるうえで重要であることがわかった。やがて、中国最大の機体数を持つ中国南方航空が微信のオフィシャル・アカウントを開設した。

あるユーザーが「明日、北京から上海まで」と書き込むと、微信はその条件に当てはまるフライトの情報をすべて表示する。フライトを選んでクリックすると、ユーザーは中国南方航空のサーバーに移動し、そこで予約や支払いを行うことができる。

データのやり取りはすべて航空会社のサーバー上で行われるのだが、ユーザーはすべてを微信上で行っているような印象を受ける。これがユーザーの手間を劇的に減らした。ユーザーはもはや新しいアプリをダウンロードしたり、スマートフォンの小さな画面の上で、あちこちのウィンドウを行き来したりしなくて済む。

これは新たな価値提案だった。すなわち、企業は望むならば自社で新しい機能をいくつでもつくることが可能で、すべてのデータを保持することができる。そうでありながら、ユーザーインターフェイスは何億人もの中国人が慣れ親しんだ微信のものを使うことができるのだ。


■データ保存できないことが西側と組む「強み」に
ある社員がわたしに、微信はユーザーのデータを平均で5日間しか保持しないと言ったとき、わたしはそれを疑わしく思った。顧客情報を手放したい企業などないだろうと考えたからだ。

わたしの共同研究者も同様に感じて、微信のサーバールームの大きさを尋ねた。するとその面積は小さく、そこから判断するとストレージも微々たるものと考えられた。

リアルタイムでのモニタリングと機能の利用分析以外では、データマイニングはまったく不可能なのだ。しかし、微信が顧客データを保存できないというまさにその点が、西側の企業にとつては魅力となる。そうでなければ、彼らは微信と強い協力関係を結びたがらないだろう。大手企業は情報のコントロールを失うことを好まないからだ。

微信の大きなブレークスルーは、製品の優れた機能は社内では決して開発できないと認識したことだ。キラーアプリは、ユーザーが開発すべきなのである。

スティーブ・ジョブズのような鋭い人物でも、iPhoneの非常に優れた機能が、たとえばタクシーを呼ぶこと(ウーバー)や、自動的に消える写真を撮ること(スナップチャット)などになることは予想しなかった。

どんな企業も、ウーバーとスナップチャットを両方思いつくことはできない。たいていの場合、意思決定の質が向上するのは、多様で独立したインプットがあるときだ。微信は、意思決定そのものを分散し、アウトプットを「大量生産」したのである。
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日本人が使える中国キャッシュレス決済“アリペイ”。現地で使って分かった「便利だけど不便」

生活のほぼ全てのシーンでキャッシュレス払いができてしまう中国。それを支えるのがアリババ集団の「アリペイ(支付宝)」とテンセントの「ウィーチャットペイ(微信支付)」の2大巨頭だ。

これらのサービスは、これまでは中国国内の銀行口座が無いと利用できない、つまりビジネス出張や観光目的の日本人には使えなかったが、2019年11月に状況が一変。両社ともに、日本人を含む外国人がクレジットカードなどからチャージして使用できるサービスを開始したのだ。


中国出張がどの程度便利になるのか。記者が実際に中国へ飛んで確かめたところ「便利だけど不便」な現実が見えてきた。

アリペイ「Tour
アリペイ「Tour pass」を導入して中国に行ってきた筆者
■気まずさよ、さらば

チャージ自体は簡単だ。クレジットカードとパスポートの写真をアプリに登録すれば、ものの5分で完了する(詳しいやり方はこちら)。

北京に着いた私は、早速街のコンビニへ。7月に取材で大連市を訪れた際には、まだこのサービスがなかったため現金払いで通していた。レジの店員が常に「微信吗?(ウィーチャットペイで払う?)」と聞いてきて気まずい思いをしたものだ。

適当に飲み物を見繕ってレジに持っていく。アリペイを起動し、QRコード画面を店員に掲示する。あとは店員がバーコードリーダーで読み取って決済完了。

コンビニの決済は2秒で終わる
コンビニの決済は2秒で終わる
あまりに呆気ない。店員は一言も発さずに次の客の相手をし始めたので、思わず「もういいの?」と聞いてしまった。これは簡単だ。

次に試したのは飲食店。中国の街中には「清真(ハラール)」の看板を掲げた新疆料理などを提供する大衆食堂が多くあり、筆者も上海で過ごした学生時代は週7のペースで通っていた。

食事を終え会計を頼むと、店主は壁に貼ってあるQRコードをあごでさした。今度はQRコードをアプリでスキャンして、指定された代金を自分で入力する。「この金額を支払う」ボタンをタップし、証拠として店員に画面を見せれば会計終了だ。

もちろん釣り銭などのやり取りもなく、楽だ。仮に中国語が話せない日本人でも、メニューにある金額を入力すれば良いだけなので、英語すら通じないこうしたローカルな飲食店に入るのにも抵抗はなくなりそうだ。

21元(約330円)。ごちそうさまでした
21元(約330円)。ごちそうさまでした
■ローカルな移動手段にも

私は今回北京と深圳を訪れた。こうした大都市は地下鉄網が張り巡らされ、渋滞しがちな道路をタクシーで移動するより遥かにストレスが少ない。

たとえ現地に不案内でも、中国版グーグルマップとも言える「百度地図」アプリを使えば乗り換え案内もしてくれるので迷わずに済むのだ。

深圳の地下鉄駅周辺
深圳の地下鉄駅周辺
ここでもキャッシュレス決済が役に立つ。地下鉄駅の自動券売機で目的の駅名をタップし、QRコードをスキャンすればいい。券売機では、外国人が持って行きがちな100元札が基本的に使えず、これまでは小銭を用意する必要があったのでこれも楽だ(ちなみに深圳では現金払いのみの券売機も見かけた)。

■「オフラインのみ」という枷

ここまで、アリペイ導入でいかに日本人の出張が便利になったかを書いた。しかし、私は何もアリペイを絶賛したいわけではない。実際にはまだまだ不便な点も多い。

その代表格がタクシー配車だ。地下鉄駅があればそれを使うに越したことはないが、駅が近くにない場合、頼れるのはタクシー。料金も日本より割安で気軽に使える存在だ。

中国では手をあげていわゆる「流し」のタクシーを捕まえることも可能だが、今はスマホアプリで呼ぶのが主流だ。こうした配車サービスでは、日本でも展開している「DiDi」などが有名。配車と同時に、紐付けしたアリペイ残高などから支払いも済んでしまう気軽さが人気だ。

しかし、外国人が使える「アリペイ」ではこのサービスを享受することはできない。それもそのはず、開放されたのはQRコードを使った「オフライン決済のみ」で、中国人が普段やっているようにアプリ上で簡単に決済、という芸当は出来ないのだ。

ちなみにDiDiは、支払い手段として日本で使えるクレジットカードも登録できる。しかし、現地で使用できずにわざわざ中国の携帯を書い直した日本人もいる。広報担当者に確認したところ「日本でダウンロードしたDiDiアプリは中国では使えない」とのことだった。

街にずらりと並んだシェアサイクルも別途、あらかじめアプリをインストールしてクレジットカードを登録しておく必要があるので、アリペイなどがあるだけでは使えなかった。

北京のシェアサイクル(筆者撮影)
北京のシェアサイクル(筆者撮影)
■スーパーアプリの世界はまだ先...

この「オフライン決済のみ」という制限の持つ意味は大きい。

そもそも中国でキャッシュレス決済があっという間に浸透したのは、上述した「レジが便利」程度ではなく、アプリ一つで何でも実現してしまうような全能感が理由の一つだと私は考えている。

代表的なのがウィーチャットの「ミニプログラム」で、本来チャットアプリのはずのウィーチャット一つで、タクシー配車や食事の出前、さらに映画の口コミを見てチケット購入...など生活に必要なほとんどのことをカバー出来てしまう。ウィーチャットが「スーパーアプリ」と呼ばれる所以だ。

スーパーアプリ「ウィーチャット」

ただ現状では、オフラインのQRコードにかざして支払いができるだけで、日本人は中国のキャッシュレス中心のライフスタイルを体験することはできない(もちろん、中国国内に銀行口座がある場合は別だ)。

日本では、ヤフーとの経営統合を発表したLINEが今後「スーパーアプリ」を目指すとみられている。実際に中国に行っても体験できなかった、1つのアプリで生活が成り立つような世界が、日本でも実現するのを心待ちにしたい。
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キャッシュレス決済先進国中国、二大アプリ「Alipay」「WeChat Pay」のシェアは?最新2019年Q2レポートを紹介



「キャッシュレス決済」先進国といわれる中国では、AlipayとWeChat Payの二大サービスが普及しています。日本の店舗でもインバウンドの需要取り込みを狙い、こうした決済に対応する動きが出ています。PayPayのQRコードはAlipayで、LINE PayのQRコードはWeChat Payで利用できるようになり、店舗側の対応のハードルも下がったと言えるでしょう。

また今月上旬には、これまで中国の銀行口座やクレジットカードがなければ原則チャージや利用ができなかったAlipayやWeChat Payが外国人にも利用しやすくなることが相次いで発表されました。ミニアプリの提供や、中国国外のクレジットカードとの連携により利用が可能となります。

今回は、それぞれの特徴や2019年第2四半期における市場シェアについて解説します。

目次

AlipayとWeChat Payの違いは?
Alipayの支払以外の機能
WeChat Payのユーザー数は8億、Alipayとの共通点は「ユーザーの囲い込み」
AlipayとWeChat Pay、どちらがよく使われているのか?
中国でのその他のモバイルペイメント(スマホ決済)にはどんな特徴があるか
まとめ:利便性だけでなく「データ活用」が肝のスマホ決済
AlipayとWeChat Payの違いは?

Alipayは中国語名称を「支付宝」(ジーフーバオ)といいます。ECモール「Taobao」や「Tmall」で知られるアリババグループのアントフィナンシャルが運営しています。青い「支」のアイコンが目印です。2004年の12月にサービス提供を開始し、今年の1月にユーザー数が10億を突破したことを発表しています。

WeChatは中国版LINEと呼ばれるメッセージングアプリで、昨年ユーザー数が10億を超えました。WeChatの支払い機能「WeChat Pay」(微信支付)支払い機能はAlipayよりも早い2013年の夏に開始しています。

Alipayの支払以外の機能

実際の支払いにおいては、Alipayにチャージされている金額内での決済ができるだけでなく、Alipayに紐づけた銀行口座やクレジットカードでの決済も可能です。

もともとAlipayは「タオバオ傘下の決済サービス」という形でユーザーに決済機能を提供していました。スマホの普及や経済成長に伴い、Alipayアプリも広く使われるようになっています。またその利用シーンはアリババの提供するサービスだけにとどまりません。

またAlipayには現在、信用スコアの「芝麻クレジット」や、剰余金で小口の投資ができる「余額宝」(Yuebao)、飲食店やレジャー施設の口コミの検索ができる「口碑」(Koubei)といった機能もあります。

この他、アプリの起動後のページには様々なメニューが並んでいます。配車アプリや水道光熱費の支払い、公共交通機関や海外での配車、さらには保険、映画情報とチケット、宿泊施設の検索と予約、シェアサイクル等、生活に必要な多岐にわたるサービスが、このアプリ一つで提供されていることがわかります。

▲[アプリの起動ページ、英語版]:筆者スクリーンショット
▲[アプリの起動ページ、英語版]
またアプリ内で起動するミニプログラムや、WeChatの「公式アカウント」のような「生活号」が存在し、WeChatのようにアプリの中で多様な機能が利用できるようになっています。

▲[Alipayユーザーに情報を届ける生活号]:筆者スクリーンショット
▲[Alipayユーザーに情報を届ける生活号]


WeChat Payにも、ほとんど同様の機能が備わっています。どちら一方を使うだけでも、中国での生活に不便はないでしょう。中国のお祝いごとでよく見られる恋人や親戚への「送金」機能も、どちらも同様に利用することができます。実際には両方のアプリを使うユーザーが大多数となっています。

ただし、一日の利用限度額には多少の差があるようです。Q&Aサイトのあるやり取りでは、Alipayは年20万元が上限で、5,000元以上の支払いは銀行口座から直接引き落としの形でしか利用できないとされています。

WeChat Payのユーザー数は8億、Alipayとの共通点は「ユーザーの囲い込み」

WeChat Payのユーザー数は、WeChatと一致するわけではありませんが、2017年末の時点で8億ユーザーを超えたとの情報もあります。

WeChat PayがAlipayと大きく異なる点は、もともとチャット機能やSNS機能でユーザーに支持されていたサービスのWeChatに付帯した機能だという点でしょう。ユーザーのアプリ立ち上げの動機が異なるため、WeChatの方が公式アカウントで情報を届けやすいという可能性もあります。また、コミュニケーションの過程で送金に利用されることもあると考えられるでしょう。

Alipay、WeChat Payの両方とも、幅広い領域のサービスと提携しており、アプリの中で直接利用できるのが特徴です。それぞれが提供するアプリを起点としたユーザーの囲い込みを実現しています。どちらも傘下のECサービスがメニューにあることも特徴です。

AlipayとWeChat Pay、どちらがよく使われているのか?

中国のリサーチ機関iResearchが10月15日に発表した「2019年第2四半期中国第三者決済データ」によれば、2019年4月~6月のモバイルペイメント(スマホ決済)の市場規模は55兆元(約858兆円)、前年同期比22%増となりました。その増加スピードは徐々に減速しています。

※1元=15.6円で計算、以下全て同じ

▲[四半期ごとの取引額と成長率]:iResearchレポートより


このレポートによれば、モバイルペイメントの各ブランドごとの取引額シェアは以下の通りです。

▲[2019年第二四半期におけるモバイルペイメントのブランド別シェア]:iResearchレポートより


Alipayが54.2%で市場1位、続くWeChat Payを含む财付通(財付通)が39.5%で市場2位となっており、この2者で市場のほとんどを占めていることがわかります。财付通(財付通)はWeChatを運営するテンセントが展開する、第三者決済プラットフォームの名称です。

この他にも複数のブランドが存在しこれらによる支払いを受け付ける小売店なども少なくありませんが、シェアを見ればわかる通り、中国での生活にはAlipayやWeChat Payがあれば事足りるというのが現状となっているようです。支払いを軸とした多領域へのサービス展開で、ユーザーの囲い込みに成功していることから、AlipayとWeChat Payの二強時代は少なくともしばらくは続くと見られます。 

中国でのその他のモバイルペイメント(スマホ決済)にはどんな特徴があるか

中国平安が提供する「壹钱包」、ECサイトの京東が提供する「京东支付」が3、4位に続きますが、モバイルペイメント全体の取引額に占める割合はそれぞれ1.5%、0.8%とかなり限定的です。それ以下のブランドのシェアも、全て1%未満です。

ただし、それぞれのサービスには強みとする領域があり、こうした部分から将来的にAlipayやWeChat Payの踏み込めない市場を形成し、モバイル決済を利用した事業を成長させる可能性もあるでしょう。

壹钱包は保険会社の中国平安グループのサービスとあり、理財商品や保険商品、旅行商品の充実が特徴です。また京东支付はオフラインでの市場拡大スピードが速いことがレポートでは述べられています。

今回市場5位となった「联动优势」は企業間取引でのシェアを拡大しており、サプライチェーンファイナンスの総合的サービスを提供しています。結果としてじわじわとシェアを伸ばしているようです。

まとめ:利便性だけでなく「データ活用」が肝のスマホ決済

最新の2019年第2四半期のデータでは、中国のモバイルペイメント(スマホ決済)におけるAlipay、WeChat Payの圧倒的シェアが確認できました。

都市部の無人レジでは現金を受け付けずに、機器のQRコードからAlipayあるいはWeChatのミニプログラムを起動させて、アプリ内からの支払いを求める店舗もあります。中国では、スマホ決済を利用していない人はいない前提で設計される店舗すらあるということでしょう。また、WeChatと連携することによる顔認証決済もスタートしています。

モバイルペイメントは、ユーザーの利便性や人員の削減といったコストカットができるだけでなく、ユーザーのデータが収集できる点も注目に値します。CRM(顧客関係管理システム)を構築したうえで、ユーザーの趣味嗜好に合わせより関心とマッチする商品のレコメンドすること等が可能となります。

インバウンドの領域においても、こうしたデータの活用が重要です。まずは、WeChatの公式アカウントや広告によるユーザーの興味喚起、来店の動機づけなどからスタートするのも一手と言えるでしょう。
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rikezyo00sumaho at 23:55│Comments(0)

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